子どもの頃は、遊ぼうとしたら自分で何かつくるしかないっていう時代だったので、特別「ものづくり」が好きだっていう感覚もなかったです。父親によく多摩川に釣りに連れていかれて、それが高じて学生時代は釣り部に入っていました。だんだん市販の釣り道具に「つくりが雑だなぁ」って感じるようになってきて、だったらもう「自分でつくってしまおう」と、浮きとか糸巻きとかの細かいものから、道具入れや竿もつくりだしました。

サラリーマン時代はボーナスの大半を道具につぎ込んでましたね(笑)。月金は忙しく働いて土曜日は釣りにいく。日曜日はゆっくり休みながら前日の釣りの反省をしたり道具をつくったり。50代後半くらいから、退職したら工房をやろうと思って、ブログをオープンしたり準備を始めました。

そして60歳、自宅に「鰍工房」の看板を掲げました。お客さんの身長に合わせて靴べらをつくったのが最初の仕事だったかな。お金をいただくのはやっぱり緊張します。壊れないか試してみたりして、それまでしなかったことをするようになりました。

「使う身にならないとわからない」、それがものづくりの基本だと思っています。包丁だって自分で料理しないと研げないですよ。「包丁を研いでくれ」と言われたら、刃物の部分を研ぐだけでなく、細かい部分もいろいろと調整して、その包丁を一番使いやすい形にしてお渡しするようにしています。

(2013年 秋号)